まずはトラブルを防止することが大切
トラブルを予防するために効果的な方法の一つが、生前贈与です。
生前贈与は生きているうちに自分の意思を明確にするという意味では遺言と同じ効果がありますが、遺言と異なるのは、ご自分の財産を実際に与えるという行為を伴うことです。
贈与者本人は自分の意思で与える事を確実にすることができ、また贈与時点においてその理由や気持ちを直に伝えることも可能ですし、それを受けた人も、感謝の気持ちを直接伝えることができます。
相続税は、基礎控除・配偶者に対する税額減税措置・小規模宅地の特例、などさまざまな軽減策が取られているのが特徴ですが、相続時精算課税制度を選択することも有効です。
これは贈与者が65歳以上の親で、受遺者が20歳以上の子である推定相続人のである場合に、贈与財産の価額から特別控除として受遺者ごとに2,500万円が、相続時に精算される制度です。
遺言の効用
そもそも相続財産は、遺言者本人の物です。
生きている間はご自分が自由に処分できたはずですし、ご自分の死後、財産を誰にどの位譲るかも、遺言者の自由です。
ですから遺言は遺言者の最終意思として最大限度に尊重され、その意思が明確な場合は、相続人はその意思に従って財産の分配を受ける事になります。
相続人は遺言者の意思に反する財産争いをすることはできないはずです。
遺言ではご自分の意思にて財産の配分等ができますが、遺言には方式や要式に規定があります。
法的な不備があると遺言をする意味がありませんので、財産の内容やそれをどのように分割できるかや、遺留分への配慮などについては、事前にご理解した上でないと逆効果になりかねません。
配偶者がいる方は、一旦一切の財産を配偶者に相続させるとの内容と、付言のその配分をした理由や心情を記載した遺言を残されることをお薦め致します。
法定相続の第一順位である直系卑属(被相続人の子供)が最も理解し易い内容です。
経営承継円滑化法
平成20年2月に「中小企業における経営承継の円滑化に関する法律案」が国会に提出されました。
これを受け、平成21年度税制改正で「取引相場のない株式などに係わる相続税の納税猶予制度」を中心とする事業承継税制が創設されます。
税制改正の背景
1)これまでは生前贈与で後継者に移転した自社株式についても、遺留分の基礎財産に加えられるため、遺留分侵害分を取り戻されることがよくありました。
要するに、自社株式などを後継者へ移転した分は、遺留分権利者から遺留分の減殺請求をされた場合に、遺留分の算定の基礎財産に加えられ、遺留分侵害分が非後継者に移転する危険性があったのです。
2)相続税の算定にも問題がありました。
現行の税法では、相続税の算定時に合算される額は贈与時の評価額ですが、民法上の遺留分の算定では「相続開始のときにおける価額」となっています。
そのため、生前贈与後に後継者の貢献により株式価値が上昇すると、上昇した分だけ相続時点の遺留分減殺請求の額が増え、後継者の事業承継意欲を阻害していました。
新税法で何が変わるのか
今回の「経営承継円滑化法」は、事業承継の阻害要因だった民法の遺留分制度に対しての特例です。
また、「株式等に係る納税猶予制度」は、事業承継の阻害要因だった相続税負担に対しての納税猶予措置なのです。
上記の2つの課題に対して以下の導入効果があると考えられます。
1)この制度を活用することによって、一定の要件を満たす後継者へ先代経営者から贈与された自社株式、その他一定の財産について、遺留分算定の基礎財産から除外できるようになります。
その結果、事業承継に不可欠な自社株式などの生前贈与が確実になるのです。
2)改正により、遺留分の算定時に、生前贈与株式の額を当該合意時の評価額であらかじめ固定できるようになります。
その結果、生前贈与後の後継者の貢献による株式価値上昇分は遺留分減殺請求の対象外となり、後継者の経営意欲も阻害されなくなるのです。
中小企業の定款整備・内容確認
経営者が亡くなった場合、経営者(会社)=所有者(株主)ではなくなることがあります。
また、株主に相続が発生した場合、経営者が全く知らない株主が登場するということも考えられます。
こういったときに、定款を整備しておけば、ある程度トラブルを予防することが可能なのです。
定款は分かりやすく言うと、会社と株主との「契約書」みたいなものです。
「定款」をきちんと整備しておかないと、事業を継ぐ後継者の方が思わぬところで失敗をする可能性があります。
経営者=所有者のうちに、定款の整備をしておきましょう。
相続人から株式会社の株式を買い取る規定や、特定の株主からだけ株式会社が自己株式を取得し、他の株主には自己株式の買い取り請求をさせない定款変更をするケースがあります。
種類株式の発行に関して
こういった際に最近良く使われるのが、種類株です。
種類株とは、会社法の規定の範囲内で定款に定めることによって、株主の権利について普通株式とは違った権利を付与したり、株主の権利の一部を制限または剥奪した株式のことです。
種類株式は、以下の9つの権利について異なった株式を発行することが可能です。
もちろん、9つの権利のうち、いくつかの権利を重複して付与したり、いくつかの権利を制限または剥奪をした株式を発行することも可能です。
1.取得請求権付種類株式
2.剰余金の配当
3.残余財産の分配
4.拒否権付種類株式
5.議決権制限種類株式
6.譲渡制限種類株式
7.取得条項付種類株式
8.全部取得条項付種類株式
9.種類株主総会において取締役または監査役を選任することができる種類株式
種類株式を発行する場合には必ず、各種類株式ごとの発行可能株式総数も一緒に定款で定めてく必要があります。
種類株式の発行の定款変更決議のときにあわせて定款変更をしてください。
事業継承の相続税対策について
事業承継で経営者の方が最も心配されるのが相続税対策です。
特に、中小企業の多い日本では、非上場株式や非上場企業の評価が重要ですが、これが困難だと言われているのです。
非上場会社の評価は、相続税・贈与税の計算上「取引相場のない株式」に分類されます。
大きく分けると、その評価方法は
■ 純資産価額方式
■ 類似業種比準方式
■ 配当還元方式
に大別されます。
これらの評価方法は、会社の規模(資産総額・従業員数・売上高等)によって、以下のように変わります。
大会社
類似業種比準方式か純資産方式を適用します。
中会社
類似業種比準方式と純資産方式の併用方式(併用割合:類似0.6~0.9、純資産0.4~0.1)
小会社
純資産方式または類似業種比準方式と純資産方式の併用方式(併用割合:0.5)
事前に持株、不動産の贈与をしておいたり、他者に売却するなど、長期的効果が期待できる対策をすることが重要です。
また、経営者自身が所有する株式や、経営している会社の自社株や不動産等の財産は、今後の事業継続を考えて後継者へ集中させて引き継がせること重要です。
不動産の場合であれば、経営者名義のものを会社名義、あるいは後継者名義にする必要があるでしょう。
親族や後継者に売却する形式で同時に節税効果を狙うこともあります。
いずれにしても、どのような財産を引き継ぐかは,相続人となる親族も含めて、よく話し合い、お互いに納得することが必要です。
これを怠ると,会社経営を揺るがす事態になることもよくあります。
法律面、税金面、経営面で専門家に相談をするのが望ましいでしょう。
死後事務委任契約とは、葬儀や埋葬に関する事務を委託する契約のことで、委任者が受任者に対し、自分の葬儀や埋葬に関する事務についての代理権を与え、死後の事務を委託する委任契約のことです。
遺言で葬儀や法要のやり方を指定する方もいらっしゃいますが、これは法定の遺言事項にあたりません。
遺言者の希望ということで、遺産の分配等に関する条項に続く付帯事項としてなされることになります。
葬儀のやり方を具体的に指定したり、散骨等を埋葬の方式として指定したりする場合には、実際に葬送を行うことになる人々との話し合いや準備をしておくことが重要です。
一方で、この死後事務委任契約は原則として委任者の死亡によって終了しますが、委任契約の当事者である委任者と受任者は、「委任者の死亡によっても委任契約を終了させない旨の合意」をすることができますので、委任者は受任者に対して短期的な死後の事務を委任することができます。
晩年の身上監護と財産管理を万全なものとしたうえで、死後の相続、相続財産の管理、または処分および祭祀の承継に紛争を生じないようにするために有効だと言われています。
確実に行われるようにするために、遺言で祭祀の主宰者を指定しておく、遺言執行者を指定して、その遺言執行者との死後事務委任契約を締結する方法も考えられます。
契約内容の注意点
費用の負担について明確にしておく必要があります。
任意後見人・成年後見人等は、ご本人が死亡した時点でその職務が終了しますし、見守り契約のみの場合では、死後の事務を行うための財産的裏付けがなく、葬儀費用等の支払いを行うことができなくなります。
遺言で祭祀の主宰者に、「遺言者の葬儀費用に充てるために、金○○円を預託してあり、それを使用して下さい」と指定することも可能です。
ご本人がご希望される内容にて、その費用分を明確にし、その預託金として預けたとしても、相続財産に混在してしまう危険性や、預託が長期にわたる場合には、不正が発生することを事前にご理解して頂く必要があります。
また、80歳まで契約可能な保険を活用される方も増えており、生前予約された分の保障を保険とお考えのようです。
亡くなった後の事務手続き
・委任者の生前に発生した債務の弁済
・委任者の死後の葬儀、埋葬もしくは永代供養に関する債務の弁済
・賃借建物の明け渡し、敷金もしくは入居一時金等の受領
・親族関係者への連絡
・家財道具や生活用品の処分に関する事務
それぞれを必要に応じて行うことも可能です。
「任意後見契約」「見守り契約」「死後事務委任契約」「公正証書遺言」を含めて、検討されることをお薦め致します。
財産管理委任契約とは、自分の財産管理や生活する上での事務について、代理権を与え、委任する契約です。
任意代理契約とも呼ばれます。
財産管理委任契約の特徴は、
■ 当事者間の合意のみで効力が生じる
■ 内容を自由に定めることが出来る
ということでしょう。
財産管理委任契約と成年後見制度の違い
判断能力の減退があった場合に利用できるのが成年後見であり、財産管理委任契約は特にその制限がない点が大きな違いです。
また、裁判所が間に入ることなく、当事者間で自由に設計出来る点も異なる部分でしょう
すぐに管理を始めなければならない場合、判断能力が徐々に低下するその前から管理を継続させたい場合、死後の処理も依頼したい場合などに有効な手段といえます。
財産管理委任契約のメリット
・判断能力が不十分とはいえない場合でも利用できる
・開始時期や内容を自由に決められる
・本人の判断能力が減退しても、契約は当然に終了せず、特約で死後の処理を委任することも可能
>財産管理委任契約のデメリット
・任意後見契約と異なり、公正証書が作成されるわけではなく、後見登記もされないため、社会的信用が十分とはいえない
・任意後見制度における任意後見監督人のような公的監督者がいないため、委任された人をチェックすることが難しい
以上のことをしっかりとおさえたうえで、財産管理委任契約の判断をしましょう。
法定後見の場合、後見人は家庭裁判所が選任します。
しかし、後見開始審判の申立書には、後見人の候補者を記載する欄があり、ここに候補を記載しておけば考慮してもらえます。
ただし、家庭裁判所の家事調査官が調査して、相続関係等から不相当であるとの判断がされると、候補が記載されていても別途選任されます。
候補が記載されていないときは、家庭裁判所が司法書士などから適任者を探して、選任されます。
また、後見開始の審判申立書に書く候補者を誰にするべきかについては、人によって考えが異なります。
過去の例では、子供や兄弟、配偶者等の親族がなることが多いようです。
理想的なのは、
■ お金に関して絶対の信頼をおける方
■ 面倒見の良い方
■ 近所で生活している方
■ 本人より若い方
でしょう。
最近は、身上監護は親族、財産管理は司法書士が担当するという「共同後見」や、法人自体を後見人にする「法人後見」が増えてきつつあります。
財産管理が中心になる場合は、第三者が客観的な立場で管理した方が望ましい場合も多いのでしょう。
また、相続人が複数存在する場合も、共同後見として、話し合いで後見事務を行うのがよい場合もあります。
任意後見の場合は法定後見の場合と異なり、自分で自由に後見人の候補者(任意後見受任者)を選任することができます。
ただし、以下の人は欠格事由に該当しますので、後見人にはなれません。
1) 未成年者
2) 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人、補助人
3) 破産者
4) 行方の知れない者
5) 本人に対して訴訟をした者、その配偶者及び直系血族
6) 不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者
身上監護が中心であれば、親族や社会福祉士等の方がきめの細かい後見ができるかも知れませんが、財産管理が中心であれば司法書士の方が適切な管理ができるかもしれません。
注意をしなければならないのは、後見人にも将来何があるか分からないことです。
平均寿命が長くなっている現状を考えると、最も安心なのは、信頼できる法人を後見人にする「法人後見」だと思われます。
現在法人後見を実施しているのは、全国的には、司法書士会が設立した(社)成年後見センター・リーガルサポートがあります。
任意後見契約
任意後見制度とは、本人が契約の締結に必要な判断能力を有している間に、将来自己の判断能力が不十分になったときの後見事務の内容と、後見する「任意後見人」を、公正証書で決めておく制度です。
なお、任意後見制度での家庭裁判所の関与は、本人があらかじめ選任しておいた任意後見人を、家庭裁判所が選任した任意後見監督人を通じて監督するにとどまります。
この際、任意後見監督人は本人が選んだ任意後見人がきちんと仕事をしているかチェックします。
任意後見契約においては任意後見人を誰にするか、どこまでの後見事務を委任するかは話し合いで自由に決めることができます。
上記の内容を公証人役場で公正証書を作成する必要があります。
任意後見のメリット
・成年後見等の法定後見制度のように今現在、本人に判断能力の低下がなくても利用することができること
・契約内容が登記されるので任意後見人の地位が公的に証明されること
・家庭裁判所で任意後見監督人が選出されるので、任意後見人の仕事ぶりをチェックできること
などの良いところがあります。
任意後見のデメリット
・死後の処理を委任することが出来ない
・法定後見制度のような取消権がない
・財産管理委任契約に比べ、迅速性に欠ける
・本人の判断能力の低下前に契約は出来るが、実際に管理は出来ない
良い点悪い点をしっかりとおさえて、任意後見をするかしないかの判断をすることをお勧めします。
成年後見人選任申立て
成年後見制度は精神上の障害(認知症、精神疾患等)により判断能力が十分ではない方が不利益を被らないよう、家庭裁判所に申立てを行ない、その方の法律行為を援助する代理人を付けてもらう制度です。
一人暮らしのお年寄りが悪質な訪問販売員に騙されて高額な商品を買わされてしまうといったニュースがよく取り沙汰されますが、遺産分割の場面のみならず、このような事例も成年後見制度を上手に利用することによって被害を防ぐことができる場合があります。
成年後見人の役割
申立てに必要な書類と費用
遺言書の保管
せっかく作成した遺言書も、相続人に発見されなければ何の力にもなりません。
従って、遺言書は遺言者が亡くなった後に相続人らがわかるような場所に保管しておく必要があります。以下の具体例も考慮にいれて、その保管場所を考えてみましょう。
公正証書遺言の場合:
■ 公正証書による遺言は、遺言書の原本が公証役場に保管されています。従って、相続人らに遺言書を作成してある公証役場の場所を伝えておけば十分です。
■ 遺言書の存在が明らかになっても、相続人らが公証役場を訪れて遺言書の内容を教えて欲しいと要求したり、閲覧を請求したりしても、公証人がこれに応じることはありません。
司法書士に頼む場合:
■ 遺言書作成の際にアドバイスを受けた司法書士に保管を頼むという方法があります。
■ 司法書士は守秘義務を負っており、職務上知りえた事実を第三者に洩らすことは禁止されています。従って、遺言書の存在すら秘密にしておくことも可能です。
第三者に頼む場合:
■ 自筆証書遺言の場合、親族等に預けることもあります。しかし法定相続人など遺産に利害関係のある方に預ける場合には、隠匿、改ざんの恐れがあり、後に紛争の元となりかねませんので、なるべく遺産に何の利害関係がない、公正な第三者に保管してもらうようにしてください。
【遺言の執行】とは、作成された遺言書に基づいて、その内容を実現することです。遺言の実現のには様々な法的専門知識が要求され、あるいは相続人間での利益が相反するなど、相続人だけで行うには大変な苦労が伴います。
このような事態を避けるために選ばれ、遺言の実現を業務として担うのが【遺言執行者】です。
第三者としての公平な立場から遺言実現のための手続を行い、また、相続人は遺言執行者に従わなければならないため、公正証書遺言作成の場合には司法書士や弁護士を遺言執行者として定める場合がほとんどです。
遺言執行者は必ず定めなければならないものではないため、遺言執行者を定めないことも、相続に利害関係のない親族の方を遺言執行者として定めることももちろん可能です。なお、遺言執行者の生前の取り決めは無効となります。
※ 遺言で遺言執行者を定めた場合には、執行者に預けるのが適切です。
遺言の執行
● 遺言書の検認
相続が開始し、遺言書が発見されたら、いかにして遺言は実現されるのでしょうか?認 公正証書遺言は公証人役場に保管されているために、内容確認後、すぐに遺言内容の実現へと手続きを進めていくことができますが、それ以外の遺言書はすぐに見つけられない場合もあります。また、公正証書遺言以外の遺言書については、家庭裁判所での【検認手続】が必要となります
遺言書の【検認手続】って何?
遺言書の【検認手続】とは、相続人に対して遺言書の存在・内容を知らせるとともに、遺言書の形状・訂正の状態・日付・署名など、検認の日における遺言書の状態を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続のことです。 相続人全員の戸籍謄本や住民票も必要となってくるため、せっかく遺言書を遺したにも関わらず、場合によってはこの手続自体が遺産争いの発端になりかねません。検認手続が不要な『公正証書遺言』をオススメしています。
● 遺言書が2通以上見つかったら
遺言書が2通以上見つかった時、その内容に抵触部分がある場合には、最も新しく書かれた遺言書の内容が有効となります
● 遺言の執行
遺言の検認が終わると、いよいよ遺言内容を実現させることになります。
しかし、そもそも『遺言の執行』とは何を指すのでしょうか?
【遺言の執行】って何?
【遺言の執行】とは、作成された遺言書に基づいて、その内容を実現することです。遺言の実現のには様々な法的専門知識が要求され、あるいは相続人間での利益が相反するなど、相続人だけで行うには大変な苦労が伴います。
このような事態を避けるために選ばれ、遺言の実現を業務として担うのが【遺言執行者】です。
第三者としての公平な立場から遺言実現のための手続を行い、また、相続人は遺言執行者に従わなければならないため、公正証書遺言作成の場合には司法書士や弁護士を遺言執行者として定める場合がほとんどです。
遺言執行者は必ず定めなければならないものではないため、遺言執行者を定めないことも、相続に利害関係のない親族の方を遺言執行者として定めることももちろん可能です。なお、遺言執行者の生前の取り決めは無効となります。
※ 職務が複雑になると予想される時は遺言執行者を複数名指定しておくことも可能です。
※ また、遺言で指定を受けた人が遺言執行者を辞退することも認められています。
※ 遺言に指定がなかったときは相続人や利害関係人が家庭裁判所で選任の請求を行います。
遺言執行者は選任を受けると早速遺言内容の実現にかかります。
● 遺言の実行手順
①遺言者の財産目録を作る
財産を証明する登記簿、権利書などを揃えて財産目録を作り、相続人に提示します。
②遺産の分配を実行する
遺言の内容に沿った相続分割合を指定し、実際に遺産を分配します。登記申請や金銭の取立てをします。
④遺贈受遺者に遺産を引き渡す
相続人以外に財産を遺贈したいという希望が遺言書にある場合は、その配分・指定にしたがって遺産を引き渡します。その際、所有権移転の登記申請も行います。
■ 認知の届出をする
遺言内容に認知する旨の記載があるときは、戸籍の届出を行ないます。
■ 相続人廃除、廃除の取り消しを家庭裁判所に申し立てる
※ 遺言執行者には、執行が済むまですべての財産の持ち出しを差し止める権限があります。
※ 調査内容、執行内容を相続人に対して報告する義務があります。
※ 相続人は、遺言執行の職務を終了したとき、それに応じたの報酬を遺言執行者に支払います。
※ 報酬額は遺言でも指定できますが、家庭裁判所で定めることもできます。
札幌大通遺言相続センターがお手伝いできること
公正証書遺言とは、公証人が遺言者の口述をもとに、遺言書を作成し、その原本を公証人が保管するもので、安全で確実な遺言書であることは間違いありません。
口述の際には、2名以上の証人立会いが必要です。
公証人が作成した遺言書に、遺言者、立会人、公証人が署名押印すれば、公正証書として認められます。
公正証書遺言の作成手順
(1)誰に、どの財産を、どれだけ相続させるのかあらかじめ決めておきましょう 。
(2)証人を2人以上決めましょう。
※推定相続人、未成年、被後見人、被保佐人、公証人の配偶者・四親等以内の親族、書記および雇人などは証人の資格がありません。
(3)公証人と日時を決めましょう。
全国の公証役場で依頼でき、出向けない場合出張を依頼できます。
(4)必要な書類を集めます。
ⅰ)遺言者の印鑑証明書、戸籍謄本
ⅱ)受遺者の戸籍謄本、住民票(親族以外の人に遺贈する場合)、
法人の登記簿謄本(会社等の法人に遺贈する場合)
ⅲ)財産特定のための不動産の登記簿謄本、固定資産評価証明書
ⅳ)預金通帳のコピー
ⅴ)証人の住民票などが必要です。
(5)遺言の原案を作成しましょう。
作成された原本は、遺言者が120歳に達するまでの期間、公証人役場に保管されます(※札幌大通公証役場の場合)。
公正証書遺言をお勧めする理由は、紛失、偽造を防止できることと、法的に間違いのないものが作成できることです。
遺言は、それぞれ遺言の種類によって法律で書き方が決められています。
せっかく書いた遺言書に不備があっては元も子もありません。
自筆証書遺言と公正証書遺言の書き方についての説明をいたしますが、きちんとした遺言書を作成したいのであれば、一度司法書士などの専門家にご相談することをお勧めします。
遺言作成のポイント
(1) 全文を自筆で書くこと。
(2) 縦書き、横書きは自由で、用紙の制限はありません。筆記具もボールペン、万年筆など何を使用しても構いません。
(3) 日付、氏名も自筆で記入すること。
(4) 捺印をすること。認印や拇印でも構いませんが、実印が好ましいです。
(5) 加除訂正する時は、訂正個所を明確にし、その個所に捺印の上署名すること。
公正証書遺言の書き方
(1) 証人2人以上の立会いのもとで、公証人役場へ出向くこと。
(2) 遺言者が遺言の内容を公証人に口述すること。
(聴覚・言語機能障害者は、手話通訳による申述、または筆談により口述に代えることができます。)
(3) 公証人がその口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、または閲覧させること。
(4) 遺言者および証人が筆記の正確なことを承認したうえで、各自が署名捺印すること。
(5) 公証人がその証書を法律に定める手続きに従って作成されたものである旨を付記して、これに署名捺印すること。
証人・立会人の欠格者について
遺言執行者は証人になることが認められていますが、未成年者、推定相続人、受遺者及びその配偶者、及び直系血族は証人にはなれません。
また、公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び雇用人も同様に証人にはなれません。