【公正証書遺言】との比較で持ち出されるのが【自筆証書遺言】。
いわゆる“自分で書いた遺言書”です。
この【自筆証書遺言】は、全文を自分で書いている、押印があるなどの要件があるだけでなく、実はこのままでは法務局に提出しても名義変更を受け付けてもらえません。金融機関もやはり受け付けてくれません。
この点が、そのまま使える【公正証書遺言】と大きく異なる点です。
話題の遺言書キットもこの問題を避けられません。
遺言書キットを含む【自筆証書遺言】は、【検認手続き】が必要となるのです。
自筆証書遺言の検認手続き
【検認手続】とは、「このような【遺言書】が存在していた」ということを相続人で確認し、家庭裁判所に認めてもらう、言わば『【自筆証書遺言】を公的に認めてもらうための手続き』です。
これによって初めて【不動産の名義変更】や【預貯金の解約手続き】に利用できることとなります。
問題となるのがその具体的な手続方法ですが、以下が家庭裁判所への申立ての際の必要書類となります。
■ 遺言者(被相続人)の出生から死亡までの全ての戸籍
■ 相続人全員の出生から死亡までの全ての戸籍
■ 被相続人の住民票の除票
■ 相続人全員の住民票の除票
■ 遺言書
かなりの量の戸籍が必要であることが、おわかりになることと思います。
大切な人がいなくなってしまったというのに、これらの書類を全て集めなければ【不動産の名義】も変更することができず、肝心の【預金についても解約手続きを行なえない】こととなります。
それに加え、家庭裁判所では『検認期日』が設定され、その日には参加できない相続人を除いて、相続人全員が家庭裁判所に出頭することとなるのです。
これでは相続人同士が会うこととなってしまい、あなたの配偶者はあなたのご兄弟に気をつかわなければならなかったり、母親の違う子ども同士が結局顔を合わせる結果となり、揉めない相続のための遺言書が何ら意味をなさないことになりかねません
また、自分で上記の書類を集められない場合には専門家に依頼しなければならないこととなり、『安くて簡単に書ける【自筆証書遺言】』が蓋を開けてみれば結局、相続人にその金銭的負担がかかってしまっているという事態にもなりかねないのです。
それでもやっぱり遺言書は大事
決して『自分で【遺言書】を書いてはいけない』と言っているわけではありません。
【遺言書】とはお亡くなりになった方の最後の願望です。
それが亡くなった方の字で明確にされている・・・これほど【遺産分割】の指針となりうるものはありません。
ただし、自分でお書きになる【自筆証書遺言】も、公証役場で作成する【公正証書遺言】もそれぞれにメリットやデメリットがあります。
大事なのは【そのメリットやデメリット】、さらには【実際にどういう形で遺言書が利用されるのか】、その部分をしっかり理解した上で、【作成する遺言書の形式】を選び、相続人の将来の負担をできる限り軽減してあげることなのではないでしょうか。