相続が発生した場合、まず行わなければならないのが相続財産調査です。
「相続財産なんて、家族しか知らないのでは?」
そう思われる方もいるかもしれません。しかし、実際には故人の財産は多岐に渡り、把握しきれないケースも少なくありません。
この記事では、相続財産の種類から具体的な調査方法、期限、専門家への依頼について解説します。
相続財産調査の必要性
相続が発生した場合、相続人は様々な手続きを行う必要がありますが、その中でも特に重要なのが相続財産調査です。
「相続財産なんて、家族しか知らないのでは?」
そう思われる方もいるかもしれません。しかし、実際には故人の財産は多岐に渡り、把握しきれないケースも少なくありません。
相続財産調査は、相続手続きをスムーズに進める上で非常に重要な役割を果たします。
①相続放棄するか承認するかの判断のため
相続人は、相続開始を知った時から3ヶ月以内に、相続の方法を決定する必要があります。
- 単純承認➡故人の財産を全て受け継ぐ
- 相続放棄➡故人の財産を一切受け継がない
- 限定承認➡故人のプラスの財産の範囲内でマイナスの財産も受け継ぐ
相続放棄や限定承認を選択するには、3ヶ月以内に家庭裁判所での手続きが必要です。
相続財産の内容が不明なままでは、適切な判断を下すことができません。
特に、故人に多額の借金があった場合、相続放棄を選択しなければ、借金を背負ってしまうことになります。
②遺産分割協議のため
相続人が複数いる場合、遺産分割協議を行い、誰がどの財産を相続するかを決定する必要があります。
遺産分割協議を円滑に進めるためには、相続財産の内容を明確にしておくことが不可欠です。
もし、遺産分割協議後に新たな財産が発覚した場合、協議をやり直す必要が生じる可能性があります。
③相続税の申告のため
相続税は、相続財産の額に応じて課税されます。
相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。
正確な相続税申告を行うためには、相続財産を漏れなく把握する必要があります。
期限内に申告しなかった場合、加算税や延滞税が課される可能性があります。
相続財産の種類
相続財産は、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。これらを漏れなく調査し、正確に把握することが、相続手続きをスムーズに進める上で不可欠です。
特に、マイナスの財産を把握せずに単純承認してしまうと、故人の借金を背負ってしまう可能性があります。
また、相続税申告においては、相続財産の評価額に基づいて税額が計算されるため、正確な財産調査が求められます。
①プラスの財産
現金 | 預貯金、タンス預金、金庫内の現金など |
有価証券 | 株式、投資信託、国債、社債など |
不動産 | 土地、建物、マンションなど |
動産 | 自動車、貴金属、骨董品、絵画など |
知的財産権 | 特許権、著作権、商標権など |
その他 | ゴルフ会員権、生命保険金、退職金など |
②マイナスの財産
借金 | 住宅ローン、自動車ローン、消費者金融からの借入金など |
未払い金 | クレジットカードの未払い金、税金、公共料金など |
債務 | 損害賠償金、保証債務など |
相続財産の調べ方
相続財産調査は、大きく分けて4つの段階で進めます。
①預貯金の調査
まずは、取引のある金融機関を特定します。故人の遺品の中から、通帳やキャッシュカード、金融機関からの郵便物などを探しましょう。
金融機関が特定できたら、死亡時の残高を確認します。通帳の記帳や残高証明書の発行で確認できます。残高証明書は、相続税申告の際に必要となる書類です。
②借金の調査
借金は、調査漏れがあると後々大きなトラブルにつながる可能性があります。「借金なんてあるはずない」と思っていても、徹底的に確認するようにしましょう。
まずは、借入先を特定します。契約書や借入先からの郵便物、通帳の取引履歴などを探します。
次に、信用情報機関に情報開示請求を行い、他にも借金がないか確認します。信用情報機関は、JICC、CIC、全国銀行個人信用情報センターの3つがあり、借入先の種類によって問い合わせる機関が異なります。
借入先を特定できたら、死亡時の借入残高を確認します。借入先の金融業者に問い合わせて借入金残高証明書を発行してもらいましょう。
③不動産の調査
まずは、不動産を特定します。固定資産税の納税通知書や登記済権利証などを探します。
もし手がかりが見つからない場合は、名寄帳を申請して不動産を特定する方法もあります。名寄帳は、市町村役場で取得できます。
不動産の地番と家屋番号が分かったら、法務局に登記事項証明書を申請します。これは、不動産の権利情報(持ち分や抵当権など)を確認するためです。
不動産の必要情報が揃ったら、不動産の評価額を調べます。評価方法はいくつかありますが、相続税申告の場合は路線価方式で評価します。
④有価証券の調査
まずは、取引のある証券会社を特定します。株券や証券会社からの郵便物などを探します。
もし手がかりが見つからない場合は、証券保管振替機構に開示請求をするという方法もあります。
取引している証券会社が特定できたら、有価証券の残高を確認します。残高証明書の発行依頼方法は、各証券会社によって異なります。
相続人調査はいつまでにやるのか
相続財産調査には、法的な期限と、実務上の期限の2種類が存在します。
①法的な期限
相続財産の調査に関連する法的な期限は、主に以下の2つです。
【相続放棄・限定承認の期限】
相続人は、相続開始を知った時から3ヶ月以内に、相続放棄または限定承認の手続きを家庭裁判所で行う必要があります。
相続放棄とは、故人の財産を一切相続しないことを選択することです。
限定承認とは、故人のプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産も相続することをいいます。
これらの手続きを行うためには、3ヶ月以内に相続財産の内容を把握する必要があります。
【相続税申告の期限】
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。
相続税申告が必要かどうかを判断するためにも、相続財産の調査は不可欠です。
②実務上の期限
法的な期限とは別に、実務上も早めに相続財産調査を始めることが望ましいです。特に、相続放棄や限定承認を検討している場合は、3ヶ月以内という期限があるため、速やかに調査を開始する必要があります。
その理由は、以下の点が挙げられます。
- 相続人全員で遺産分割協議を行うためには、相続財産の内容を把握しておく必要があります。
- 相続財産調査が遅れると、他の相続手続きも遅れてしまう可能性があります。
- 相続税申告において、税務署から財産調査を受けるリスクを軽減するためにも、事前にしっかりと調査しておくことが重要です。
相続財産調査は自分で行うのが大変?
相続財産調査は、一つ一つ財産を調べて価額を確定させるという、非常に地道な作業です。
想像以上に時間と手間がかかるため、多くの人が大変だと感じています。
以下のようなケースでは、専門家への依頼を検討した方が良いでしょう。
- 相続財産が多い・把握できていない
- 相続財産に不動産が含まれる
- 時間がない
相続放棄ができる期限は、「相続があることを知ってから(=亡くなったことを知ってから)3ヶ月以内」です。
つまり、マイナスの財産もふくめて調べ上げ、「相続放棄するか、しないか」を意思決定するまでに、たった3カ月しかないのです。
相続放棄には、申請書の記入や必要書類の収集など、手続きにも時間がかかるため、財産調査は亡くなってから2ヶ月以内に終わらせるのが望ましいでしょう。
まとめ:専門家への相談で安心の相続手続きを
相続は、人生における大きな転換期です。専門家のサポートを得ることで、複雑な手続きをスムーズに進め、新たな人生のスタートを切るための時間を確保することができます。
司法書士や税理士といった専門家への相談は、決して無駄にはなりません。まずは、お気軽にご相談ください。