「相続した家が、実は未登記だった……」
そんな経験をされた方は、少なくないかもしれません。
不動産を取得した際には、必ず登記手続きを行うことが義務付けられています。
しかし、古い建物や相続によって引き継いだ不動産の中には、登記がされていないものが存在します。
未登記の建物は、様々な問題を引き起こす可能性があるため、相続した場合は早急に適切な手続きを行う必要があります。
この記事では、未登記の建物を相続した場合、どのような手続きが必要なのか、また、未登記の建物がもたらす影響について解説します。
未登記建物を相続したらどうなる?手続きの流れ
以下では、未登記の建物を相続した場合の一連の流れを手順ごとに解説します。
①相続人の決定と遺産分割
【相続人の確定】
まず、誰がその不動産を相続するのかを決めなければなりません。複数の相続人がいる場合は、遺産分割協議を行い、誰が建物を相続するかを決定します。
【遺産分割協議書の作成】
遺産分割協議の結果をまとめた「遺産分割協議書」を作成します。この書類は、後の手続きで必要になります。
②建物表題登記の申請
【登記簿の作成】
未登記の建物に初めて登記簿を作成する手続きです。
【必要な書類】
登記申請書、建物図面、建築確認通知書、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書など
【法務局への提出】
準備した書類を持って、建物の所在地を管轄する法務局に提出します。
③所有権保存登記の申請
【所有権の公示】
建物の所有者が誰かを公示する手続きです。
【必要な書類】
登記申請書、相続人の住民票、住宅用家屋証明書など
【登録免許税の納付】
この手続きには、登録免許税がかかります。
建物を未登記のまま放置しないほうがいい理由
①住宅ローンが組めない
最も大きなデメリットの一つです。未登記の建物は、銀行などの金融機関から見て、その価値や所有者がはっきりしないため、住宅ローンなどの融資を受けることができません。つまり、リフォームや建て替えをする際に、まとまったお金を用意する必要があります。
②売却が困難
未登記の建物を売却する場合、購入希望者も住宅ローンが組めないため、現金で購入できる人を探す必要があります。現金で購入できる人は限られていますので、売却に時間がかかったり、市場価格よりも安く売却せざるを得ない場合があります。
③相続手続きが複雑化する
相続が発生した場合、未登記の建物は、他の財産と比べて相続手続きが複雑になります。建物の図面や建築確認済証などが紛失している可能性もあり、相続人全員でこれらの書類を探し出さなければなりません。また、相続登記も通常の不動産と比べて時間がかかり、費用も高くなる可能性があります。
④固定資産税の評価が不利になる可能性
未登記の建物は、固定資産税の評価額が適正に行われていない可能性があります。結果として、本来支払うべき以上の固定資産税を支払っているケースも考えられます。
⑤災害時の対応が遅れる可能性
災害が発生した場合、建物の所有者が特定できないため、被災状況の把握や復旧作業が遅れる可能性があります。
未登記建物の相続手続きは自分でやるか、専門家に任せるか?
未登記の建物を相続した場合、登記手続きが必要になります。
この手続きを自分で行うか、専門家(司法書士など)に依頼するか、迷う方も多いでしょう。
自分で行うべき人 | プロに依頼すべき人 |
時間に余裕がある法律に関する知識がある程度ある費用を極力抑えたい | 時間がない法律に関する知識がない間違いなく手続きを進めたい安心して手続きを進めたい複雑なケース(共有持分がある、抵当権が設定されているなど) |
一般的には、専門知識が必要な手続きであり、ミスが許されないことを考えると、プロに依頼することをおすすめします。
どちらを選ぶべきか、以下ではそれぞれのメリット・デメリットを比較しながら解説します。
自分で行う場合のメリット・デメリット
【メリット】
- 費用を抑えられる
- 手続きの内容を深く理解できる
【デメリット】
- 時間と手間がかかる
- 専門知識が必要
- 間違いがあると、手続きが遅れたり、やり直しになったりする可能性がある
プロに相談する(依頼する)場合のメリット・デメリット
【メリット】
- 登記に関する豊富な知識と経験を持つプロに依頼することで、正確かつ迅速な手続きが期待できます。
- 登記に必要な書類の準備や手続きを全てプロに任せられるため、時間と手間を大幅に削減できます。
- 登記ミスによるトラブルを未然に防ぐことができます。
- 専門家であるプロに依頼することで、手続きに関する不安を解消し、安心して手続きを進めることができます。
【デメリット】
プロに依頼するため、一定の費用がかかる
おわりに:未登記建物を相続したら早めに対処を
未登記の建物を相続した場合、早急に登記手続きを行うことが重要です。
未登記のままでは、売却や相続、融資など、不動産に関わる様々な手続きに支障をきたす可能性があります。
登記手続きは、法律に関する専門的な知識が必要なため、自分で行うのは難しいケースが多いです。司法書士などの専門家に相談することで、正確かつスムーズに手続きを進めることができます。
大切なのは、ご自身の状況に合わせて、最適な方法を選ぶことです。
もし、ご自身で手続きを行うのが難しい場合は、まずは司法書士にご相談ください。