「故人の意思のとおりに生前贈与を受けたり財産を相続したはずなのに、遺留分を侵害されたという内容の通知が来た。どうすればいいか分からない…」
相続は被相続人が亡くなってから、複雑で手間のかかることが多くあります。
せっかく終わったと思ったタイミングで、このように遺留分侵害請求を受けたら精神的にも対応する余裕は持てないと思います。
しかし、遺留分を払わないことで起こりうる重大なリスクには注意しなければなりません。
この記事では、遺留分の請求を受けてから双方が納得する形で終えるまで、冷静に対応するためのポイントを紹介します。
ぜひ遺産相続の手続きの参考にご覧ください。
遺留分を払わないとどうなる
正当な権利を持つ相手が遺留分を請求した場合、民法の決まりとして拒否することはできません。
なぜなら、遺留分は限られた相続人に保証されている最低限の相続分であるからです。
遺留分を払わなかった場合に、どのようなリスクがあるのか見ていきましょう。
訴訟を起こされる
遺留分を払わないと、最悪訴訟を起こされるリスクがあります。
具体的には、遺留分侵害請求を無視し続けて払う意思を全く見せない場合に、相手が遺留分侵害請求訴訟を提起するということです。
相手から遺留分侵害請求を受けた場合、そのまま協議に応じれば基本的に訴訟を起こされることはないため、無視をしないことが何よりも重要です。
協議で合意が得られなかった場合、遺留分侵害請求調停へ移行し、そこでも合意が得られなければ遺留分侵害請求訴訟へと移行します。
無視をしなければ段階を踏んで対応することができるため、遺留分侵害請求を受けたらすぐ対応するようにしましょう。
財産の差し押さえ
相手が遺留分侵害請求訴訟を起こし、相手の請求が認められる判決になった場合、支払いを怠ることで財産の差し押さえに発展するリスクも考えられます。
これは、裁判で下された判決は法的な効力を持ち、相手が強制執行権を持つためです。
相手が行使に移れば、給料や預金を差し押さえられることもあり得るでしょう。
遺留分を請求されたときに確認すること
そもそもその請求に妥当性があるのか、以下の内容を確認しましょう。
遺留分を請求できる権利を持っているか
まず、相手が遺留分を請求できる相続人なのかどうかを確認しておきましょう。
遺留分を請求する権利を持つのは、配偶者と子ども、あるいは両親などの直系尊属です。
そして、被相続人の兄弟姉妹は遺留分の権利を持ちません。
両親は、配偶者との間に子どもがいなかった場合にのみ遺留分の権利を持ちます。
仮に遺留分を請求した相手が、遺留分の権利を持たない人であった場合、請求自体が無効となるので対応する必要はないでしょう。
遺留分の金額が正当か
次に、遺留分侵害請求をした際の請求金額が正当なものかも確認しておく必要があります。
まずは遺留分の金額がどのように決まるのか見ていきましょう。
基本的に相続財産の2分の1が遺留分となります。
ただし、法定相続人に子どもがいない場合に限り相続財産の3分の1が遺留分となります。
詳しくは以下の表をご覧ください。
相続財産に対する遺留分の割合
相続人 | 配偶者 | 子ども | 両親 |
---|---|---|---|
配偶者のみ | 1/2 | ||
子どものみ | 1/2の人数割り | ||
配偶者と子ども | 1/4 | 1/4の人数割り | |
配偶者と両親 | 1/3 | 1/6の人数割り | |
両親のみ | 1/3の人数割り |
遺留分の基礎となる相続財産は、被相続人が持っていた財産に加えて、「遺贈された金額」や「生前贈与された金額」を足した合計金額になります。
請求金額が不当なものと判断できるケースはいくつか考えられます。
まず、相手が多額の生前贈与を受けている場合です。
先述のとおり、遺留分の基礎となる相続財産は生前贈与された金額を足したものです。
相手が見積もった遺留分のなかに、相手が受けた生前贈与の金額が足されていない場合、相手に支払わなければならない金額は小さくなることが期待できます。
他にも、不動産や金融商品など、金額を評価することが難しい資産をあなたが受け取った場合、それらを過大に見積もることで遺留分の額を引き上げている可能性も考えられます。
相手が遺留分侵害請求をした場合、まず提示してきた金額が正当なものかを判断することが大事なのです。
時効かどうか
遺留分を請求する相手が、既に時効により請求できる権利を失っている可能性も考えられます。
時効が成立する条件について見ていきましょう。
遺留分侵害請求権が効果を持つ期間は、相続が開始したことや遺留分を侵害された事実を権利者が知ってから1年間です。
例えば遺産のうち大きな割合が遺贈されているなど、「遺留分が侵害されている」事実を知っている必要があります。
遺留分の侵害を認知してから1年間を過ぎると請求できる権利を失います。
また、相続の開始や遺留分侵害の事実を知らなくても、相続が開始してから10年経つことで、時効により無条件で遺留分侵害請求権は失効します。
遺留分を支払えない場合は「期限の許与」を求める
遺留分侵害請求は、金額として請求されるので、不動産などの現金ではない資産を多く相続した場合すぐには遺留分を払えない事情もあるでしょう。
そのため、権利者から遺留分侵害請求を受けたら協議の場を設ける必要があります。
遺留分侵害額の支払期日や支払い方法に関する話し合いを行います。
遺留分の権利を持つのは相手であるため、相手が納得してくれる事情を説明しなければなりません。
協議を行うことで、支払いを先延ばししてもらうか、分割での支払いに応じてもらうなど、お互いに納得のいく形で解決できる可能性が高まるでしょう。
もし協議を行っても同意を得られなかった場合、相手の遺留分侵害請求に対し、裁判所に「期日の許与」を求める反訴を起こすことで、期日を延期してもらう方法があります。
まとめ
今回は、遺留分侵害請求を受けたとき、遺留分を払わないとどうなるかについて解説しました。
被相続人が自分の財産を自由に扱う権利を持つのと同時に、相続人も最低額の金額を引き継ぐ権利が保証されています。
相手が権利を持つ場合は支払わなければならず、無視を続けると財産が差し押さえられるリスクが生まれてしまいます。
今回紹介した「請求金額の正当性」「時効」「期日の許与」など、必要なポイントを押さえることで、遺留分の請求を受けても冷静に対応することができるでしょう。
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