今回は、「実親の遺産を妻に渡したくない」と考えている方に、妻(特定の相続人)に遺産を渡したくない場合の対処法をお伝えします。
結論からいえば、介護などの負担がある場合を除き、直接的に妻に遺産がわたることはありません。しかし、相続後に自分(夫)が妻より先に他界した場合、夫の遺産として妻に相続される可能性が高いです。
分(夫)の死後、実親の遺産を妻に渡したくない方はどのように対処すべきかをご紹介します。
妻に夫の実親の遺産が渡るケース
民法上、夫の実親にとって夫の妻は法定相続人ではないため、直接的に妻が夫の実親の遺産を相続するケースはほぼないです。
しかし、実親の遺産が最終的に妻に渡るケースが3つほど考えられるため、ケースごとにご紹介します。
- 妻が実親の介護などを負担し特別寄与料を請求した場合
- 負担付死因贈与契約をあらかじめ夫の実親と妻で結んでいた場合
- 夫が実親の遺産を相続した後に夫が他界した場合
妻が特別寄与料を請求した場合
1つ目のケースは、妻が夫の実親に対し介護など特別な貢献を無償で行い、特別寄与料を請求した場合です。
令和元年7月1日に施行された「特別の寄与の制度」により、亡くなった方(被相続人)に対し特別な貢献をした親族であれば遺産の特別寄与が可能となりました。
ただし、特別寄与料を請求できる期間は短く、①相続の開始および相続人を知ったときから6ヶ月以内②相続開始から1年以内のいずれかになるため、注意が必要となります。
特別寄与料の計算は、介護報酬基準額を参考に「寄与料=介護報酬相当額(5,000~8,000)×介護日数×裁量割合(0.5~0.9)」で計算されることが多いです。
特別寄与料の金額に相続人と夫の妻、双方の納得が得られなかった場合は家庭裁判所に調停を依頼しますし、当事者間で納得しているのであれば計算式にこだわる必要はありません。
ただし、特別寄与料の請求には介護をした証拠として、詳細な介護日記や介護の様子を記したメモ・レシートなどが必要です。
夫の実親と妻間で負担付死因贈与契約を結んでいた場合
負担付死因贈与契約とは、被相続人(夫の実親)が息子の妻に義務やなんらかの負担をしてもらうことを条件に、遺産を贈与する契約です。
この契約は双方の合意の上で結ばれるもので、契約被相続人(夫の実親)が死亡した後で発生し、契約を無視することはできません。そのため、法定相続人ではない夫の妻が遺産を受け取る可能性が出てきます。
他の法定相続人全員が反対したとしても、負担付死因贈与契約は遺言書よりも実効性が高いため、被相続人(夫の実親)と夫の妻の意向を無視することは難しいです。
妻に義務やなんらかの負担がないのであれば、負担付死因贈与契約の取り消しが可能です。この場合は夫の妻に遺産が渡ることはありません。
しかし、すべてまたは一部履行された場合は取り消しが出来ないため、夫の実親の遺産が妻に渡ることになります。
なお、負担付死因贈与契約における義務やなんらかの負担とは、「同居後に面倒を見てほしい」場合や、「死後にペットの面倒を見て欲しい」場合などが当てはまります。
被相続人(夫の実親)が夫の妻に贈与する財産は、家・車・土地・現金など合意があれば贈与可能です。
贈与の対象資産が他の相続人に取って魅力的だった場合、相続人間でトラブルが起きやすくなるため、妻に遺産を渡したくない場合は事前に負担付死因贈与契約内容を把握しておきましょう。
夫が実親の遺産を相続した後に夫が他界した場合
3つ目のケースは、夫の実親が亡くなり、夫が実親の遺産を相続をした後に、妻よりも先に夫が他界した場合です。
例えば、「夫・妻・子ども3人家族」の家族の場合、夫の実親が他界した際には妻は法定相続人ではないため夫の実親の遺産をもらうことはできません。しかし、実親の遺産を相続した夫が妻よりも先に他界した際は、実親の遺産が夫の遺産として妻に渡る可能性があります。
夫の実親に対し、夫の妻は法定相続人にはなりませんが、1度夫の財産になってしまえば、民法上妻は夫の法定相続人となるため、1/2の相続が認められてしまいます。
この場合、妻に遺産を渡さないためには、遺言で「実親の遺産は子供に相続させる」とすると問題に見えますが、実親の遺産が遺留分を超える場合は妻の遺留分侵害とされ、妻が遺留分減殺請求をすると法定相続の半分に相当する金銭の請求が可能となります。
そのため、夫の実親の遺産の一部が妻に渡る可能性があります。
妻に実親の遺産を渡したくない場合の対処法
基本的には、妻に実親の遺産が渡りません。しかし、事前に夫の実親と妻の間に特別寄与料が発生する負担や負担付死因贈与契約が合った場合は、妻に実親の遺産が渡ってしまう可能性が高いです。
しかし、夫が実親の遺産を相続した後に夫が他界した場合、妻の遺産が渡らないようにできる場合があります。
どうしても遺産を渡したくないという方に、妻に実親の遺産を渡したくない場合の対処法を4つご紹介します。
①遺贈か死因贈与で相続させない
遺贈・死因贈与とは、遺言などで法定相続人以外にも遺産を渡せる仕組みのことです。個人に限らず、団体・法人にも遺言書に書かれた割合で遺産を残せます。
遺贈か死因贈与をしておくことで、実親の遺産を受け取り手(受遺者)に渡すことで、あらかじめ妻に渡らないようにできます。
遺贈と死因贈与の違いは、遺産を受け取る相手が同意しているかの承諾の有無で、相続時の税率が変ってきます。
承諾がある場合は死因贈与、承諾がない場合は遺贈となります。承諾を得る都合上、誰に何の財産を渡すのか秘密にしておくには遺言書を作成し遺贈を選択すると良いでしょう。
ただし、前提として民法により配偶者である妻は法定相続人であるため、子どもがいる場合は夫の遺産1/2、子どもがいない場合は2/3の遺留分が認められています。
遺贈や死因贈与を記した遺言書の場合であっても、夫の遺産1/2を超える実親の遺産を妻以外に渡そうとするものだった場合、妻が遺留分を請求(遺留分減殺請求)することが可能となり、最低でも妻に法定相続の1/2が相続されます。
その場合は、実親の遺産が妻に渡る可能性があるでしょう。また、実親の遺産が不動産などの場合は、売却し現金に変換してから妻が相続する可能性もあるため、注意が必要です。
②遺言で相続させない
実親の遺産を渡したい相手が法定相続人である場合は、遺贈か死因贈与を使わなくても、「誰が・誰に・何を」相続してほしいのか遺言で残すことができます。
ただし、相続人全員が、遺言書の内容を認めなかった場合は遺言が無効となるため、法定相続人が納得できるような分配が望ましいです。
また、遺言にしたとしても妻の遺留分を侵害した場合は、遺留分を請求(遺留分減殺請求)することが可能となります。妻が遺留分を請求を行った場合、法定相続の半分に相当する金銭が妻に渡ってしまうため、妻の遺留分を侵害しないような配分にするか、少し低い財産を遺言に記載しておくと良いでしょう。
③相続人を廃除して相続させない
廃除とは、被相続人に対する虐待または重大な侮辱を行ったその他の著しい非行を行った者に、相続資格を家庭裁判所の審判をもって剥奪できる仕組みです。
廃除することで出来ること | 遺留分を有する推定相続人に一定の非行がある場合に、家庭裁判所の審判によって、相続資格を剥奪できる |
条件 | 被相続人に対する虐待または重大な侮辱を行ったその他の著しい非行を行った |
手続き | 被相続人が家庭裁判所に廃除の申立てを行う必要がある。 |
取り消し | 家庭裁判所に対する取消請求が認められることにより取り消しができる。 |
基本的に、1度廃除してしまうと、相続権の回復は難しいです。
相続権を回復させるには、夫(被相続人)に許してもらうことが前提です。許しを得たうえで、夫が生存中に家庭裁判所に廃除の取り消しを請求を行うか、夫の死後であれば遺言書に廃除の取消しについての記述がない場合は廃除の取り消しが出来ないため、妻に実親の遺産を渡さない手段としては非常に有効です。
相続欠格事由はその対象となる行動が法律で定められており、該当する場合に当然に相続権が剥奪されるものですので、何らかの手続きが介在する余地がありません。
廃除も、これまで認められてきた裁判例をみるに、なかなか厳しい要件が存在します。そのため、廃除を望む推定相続人がいらっしゃる場合には、自己判断で遺言書に記載して済ませてしまうのではなく、事前に専門家に相談し、そもそも廃除が認められるものか否か、認められない場合にその他の解決方法はあるのか等、ぜひ相談の中で確認して頂きたいと思います。
④欠格者には相続させない
欠格者とは、被相続人などに対する生命侵害や、遺言の妨害を行った相続人から相続権を剥奪することです。
欠格者に指定された場合できること | 被相続人などに対する生命侵害や、遺言の妨害を行った相続人から法律上当然に相続権を剥奪することができる。 |
条件 | 被相続人や、先順位・同順位の他の相続人を殺害した。殺害しようとしたことで刑事罰を受けた被相続人が殺害されたことを知りながら告発した。告訴しなかった詐欺や脅迫によって被相続人の遺言書作成・撤回・取消・変更を妨げたり、遺言書を作成させ、撤回させ、取り消させ、変更させた被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、隠匿した。 |
手続き | 不要。法律上当然に相続権が剥奪される。 |
取り消し | できない。ただし、欠格の宥恕(広く寛大な心で罪を許すこと)が認められるとした事例あり。 |
欠格者は法律上相続権が剥奪されるため、手続きは不要です。
取り消しは基本的にできないため、欠格者の条件に当てはまる妻に「実親の遺産を渡したくない」とお考えの方は、手続き不要で妻に遺産が渡ることがないため、ご安心ください。
妻に渡したくない実親の遺産が不動産の場合の対処法
妻に渡したくない実親の遺産が不動産の場合はの対処法をご紹介します。
不動産が遺産の大部分を占めている場合が多いですが、不動産は評価方法にバラツキがあるため平等に分けにくいです。妻に実親の遺産である不動産を渡したくない方は、不動産の分割方法まで遺言で記載しておくといいでしょう。
不動産を分割する方法は3つあります。
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
現物分割の場合は、相続させたくない妻が不動産に興味がない際に有効です。他法定相続人の名義を相続登記してしまえば、妻に実親の遺産が渡ることはありません。
代償分割の場合、不動産自体を妻以外の相続人の名義にし、他の相続人に代償金を支払うことで平等に分割します。この場合は、他の相続人が夫の妻に代償金を支払う能力が必要になるうえ、不動産の評価を低く見積もって代償金を支払うとトラブルに発展し、結末によっては妻に親の遺産である不動産が渡ってしまう可能性があります。
妻に実親の遺産を渡さないためには、代償金を支払える支払い能力のある方を相続人に指定すると良いでしょう。
換価分割の場合は、不動産自体を売却し、売却益を分割する方法になります。この場合は親の遺産である不動産そのものが妻に渡ることはありません。不動産が別の方に渡っても良いのであれば、有効です。
不動産を円滑に分割するなら家族信託がおすすめ
妻に実親の遺産である不動産が渡らないようにすることは、難しいでしょう。遺贈や死因贈与を利用したり遺言状を作成したりしても、妻が遺留分を請求(遺留分減殺請求)したり、法定相続人全員が認めなかった場合は遺言状が無効となったりするためです。
自分の死後のことが気になる方は、信頼できる家族に実親の遺産である不動産に託せる家族信託がおすすめです。
例えば、不動産を管理する権利を長男に渡し、家賃などの利益をもらう権利だけを妻に渡すなど、相続人たちが納得いく形で契約を結ぶことができます。
妻に実親の遺産を渡したくないと考える方も、渡す割合・渡しても良いと思える部分の遺産というのは、悩みを抱える方ごとに異なっているでしょう。
札幌大通遺言相続センターは、家族信託(民事信託)をはじめとする相続の悩みを解決するため、初回の無料相談も行っています。
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まとめ
実親の遺産を妻に渡さないための対処法をご紹介しました。
直接妻に親の遺産が渡る場合は、特別寄与料や負担付死因贈与契約が発生した際がほとんどです。
多くは、実親の遺産を相続した夫が死んだ際に、妻に夫の実親の遺産が相続されるパターンです。
遺贈や死因贈与・遺言でも対応はできますが、妻の遺留分を侵害している場合は、妻が請求(遺留分減殺請求)することで妻が実親の遺産を相続してしまう可能性が出てきます。
一銭たりとも相続させたくない場合は、廃除を検討してみましょう。すでに欠格者になっている方には遺産の相続権がないためご安心ください。
実親の遺産が不動産の場合、妻に一部の権利が渡っても良いとお考えの場合は、家族信託もおすすめです。家族信託はまだ新しい制度ですが、高い相談実績を誇る当センターでは数多くの解決事例があるため、お力になれると思います。
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