相続はある日突然私たちの身に降りかかります。
「いつか相続が発生したときにスムーズに事が運ぶように」と想定して入念に準備を行っている人は、まだまだそう多くはないのではないでしょうか。
たいていの相続では、何らかのトラブルや問題がつきものです。今回はその中でもしばしばみられる「相続人が行方不明である場合」について取り上げます。
相続人の所在が分からず、連絡がとれない場合には、遺産の分配を話し合うための「遺産分割協議」を行うことができません。そうしますと当然ながら、相続手続きが前に進まないこととなってしまいますので、速やかに必要な手続きを行っていく必要があります。
相続人が行方不明のときに選任される不在者財産管理人とは
遺産分割協議は、判断能力を持つ相続人全員が参加して行われる必要があります。「連絡が取れない」「何十年も音信不通」「行方不明のままになっている」といった状態の相続人が1人でもがいる場合、そのまま他の相続人だけで遺産分割協議を行うことは許されず、家庭裁判所に申立てを行う必要があります。
何のために家庭裁判所への申立てを行うのか?
それは、「不在者財産管理人」という行方不明者(=「不在者」と呼んでいます)の代理人を選任するためです。
不在者財産管理人は、不在者の財産を管理・保存したり、必要に応じて家庭裁判所の許可を受けたうえで、遺産分割協議に参加したり、不動産を売却したりする役割を担っています。
不在者と利害関係のない親族が不在者管理人になるケースも見受けられますが、身近なところで候補者を見つけられない場合は、弁護士や司法書士が不在者管理人に選ばれることになります。
2つの失踪宣告と裁判所への申立て方法
普通失踪とは
不在者に関する手続きとして存在している制度として、不在者財産管理人制度とは別に「失踪宣告」というものが用意されています。
これは、不在者の生死が7年間判明しなかった場合、利害関係人からの申立てにより、家庭裁判所が審理のうえ、不在者について「失踪」の宣告するというものです。
失踪宣告がなされると、不在者は法律上、「死亡」したものとみなされます。このような生死が7年間明らかでないことによる失踪宣告は「普通失踪」とよばれ、民法第30条第1項に規定されています。
失踪宣告がなされた不在者は、生死不明になったときから7年間が満了したときに死亡したとみなされ、不在者財産管理人制度と異なり、不在者を被相続人とする相続が開始されます。
危難失踪とは
普通失踪とは別に、民法第30条第2項には危難失踪と呼ばれる、戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇し、行方不明になってしまった場合に適用されます。
上記のような危難が去ってから1年間、その生死が明らかでないときは、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることが可能です。この危難失踪においては、不在者について相続が開始されるのは、「危難が去ったとき」とされています。
失踪宣告を家庭裁判所に申し立てる方法
相続手続きの前提として、音信不通の不在者に関して失踪宣告の申立てを行う場合、通常、他の相続人等の利害関係者しか申立人となることができません。
具体的には「不在者の配偶者」や「他の共同相続人にあたる者」が該当します。失踪宣告を申し立てる際には、書類の提出先が「不在者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」と決まっています。間違うことのないよう、注意しましょう。
失踪宣告に必要な書類
- 申立書
- 不在者の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
- 不在者の戸籍附票
- 財産管理人候補者の住民票又は戸籍附票
- 不在の事実を証する資料
- 不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書,預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)
- 利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書),賃貸借契約書写し,金銭消費貸借契約書写し等)
※審理のために必要である場合、追加書類の提出を求められることがあります。
【司法書士・工藤からのコメント】
意外に思われるかもしれませんが、相続手続きのご相談の中で結構多いのが、この不在者の問題です。
不在者財産管理人の選任・失踪宣告、いずれを選択するか選べるようなケースであっても、不在者財産管理人の申立てをする場合には、予め家庭裁判所にまとまった金額を「予納金」として納めなければならなかったり(※20万円から100万円といわれています)、失踪宣告の場合には死亡とみなされるタイミングによっては、想定していなかった関係者が新たに登場してしまったりと、各制度を十分に知ったうえで、制度を選び、申立てをする必要があります。後悔しないためにも、必ず専門家に相談するようにしてください。
まとめ
札幌大通遺言相続センターは、札幌の中でも高い相談実績を誇る、相続のスペシャリスト集団です。
当センターは、遺言作成・成年後見人・家族/民事信託のサポートはもちろんのこと、相続人が行方不明になった場合のご相談やご依頼を幅広く承っております。ご相談・ご依頼は、事務所面談・メール・ビデオ通話で柔軟に対応可能です。
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