相続には生前身内が遺した遺産だけではなく、残念ながら借金が遺ってしまう場合も少なくありません。そんなときは相続放棄することができます。しかし、相続放棄には期限があるということをご存じでしょうか?
今回は相続放棄の期限を中心に、相続放棄について解説していきます!
相続をした後に困らないよう、今から備えておきましょう!
相続放棄とは
一般的に亡くなった方に借金がある場合、相続人であるご家族が、プラスの財産と一緒に負債を相続することになります。しかし、プラスの財産もマイナスの財産もどちらも一才相続しないと言うのが相続放棄です。
この相続放棄は、銀行やお金を貸していた人など債権者との口約束などではなく、家庭裁判所に申し立てをし承認される必要があります。どこの家庭裁判所でも良いわけではなく、亡くなった人が最後に住んでいた場所(住民票がある場所)の家庭裁判所に申し立てをする必要があります。
相続放棄の期限は「3ヶ月」
相続放棄の申し立てには期限があります。「自分が相続人である」と知った日から、3ヶ月です。例えば、亡くなったことを知らなかった場合は、亡くなった日から3ヶ月ではなく、亡くなったことを知った日(自分に相続権があると知った日)から3ヶ月です。3ヶ月とは「家庭裁判所に申し立ての書類を出す日が3ヶ月以内」となります。
また、20才以上意志能力のある人(未成年、認知症や重度の精神障害ではない人)は「そういう法律だとは知らなかった」という理由は認められません。
具体的な例をあげますと、
”債権者から電話がかかってきて初めて、普段付き合いのない親族が亡くなったと初めて知った”と言う場合です。
この場合は、自分が相続によって、債権を請求されることとなった日から3ヶ月以内に、相続放棄の申し立てを家庭裁判所にする必要があります。
財産もあるが債務もある、相続放棄すべきか否か
3ヶ月以内に申し立てをしなかった場合、財産も債務もどちらも相続する単純承認したとみなされます。財産もあるけれど、債務もあると言うのは、具体的にどのような場合かというと、家族で事業を営んでおり、その事業を継承する場合などです。
相続放棄すれば、全てのプラスの財産も相続しないことになりますので、店舗である不動産が故人所有であれば、営業を続けるのが困難になります。こういった場合は、限定承認といって、故人のプラスの財産の半にないで、負債を継承すると言う申し立てを、こちらも相続の開始があった3ヶ月以内に、相続人全員で家庭裁判所に申し立てをする必要があります。
また、もう一つ具体例を挙げますと、
会社や事業を営んでいて、家族は亡くなるまで、かなりの額の債務があると知らなかったと言う場合があります。”財産もある、そのうち不動産や事業などが複数あり、債務も複数ある。単純に相続放棄すべきか、限定承認すべきか、単純承認し資産を売却し、返済すべきか、家族だけですぐに判断がつかない”というケースがあります。
こうした場合は、やはり専門家にまず相談すべきです。相談した上で、どうするのが良いか3ヶ月以内に結論を出し、限定承認や相続放棄する場合は、期日までに申し立てをしなければなりません。
借金があるとは知らずに財産を使ってしまった相続放棄できる?
一般的には、相続財産を一部でも使ってしまうと単純承認した。プラスの財産もマイナスの財産も相続することとしたとみなされます。相続放棄とは被相続人の財産との関係を一切絶つことです。
ですが、故人がなくなってすぐ、葬式代を故人の預金口座から使用する場合もあります。その時点では、まさか相続放棄するような大きな負債があったとは知らなかったと言うケースがあります。葬儀費用については、一般的な葬儀費用であれば、相続放棄が認められるとの判例があります。一般的な葬儀費用としては200万円以下であれば認められますが、負債があるとわかっている場合は、葬儀費用は故人の預貯金などの資産から支払わない方が無難です。
相続放棄と葬儀費用に関してより詳しくご紹介してます!
相続放棄しても生命保険はもらえる?
よくいただく質問に「相続放棄をしてしまったら、生命保険の死亡保険金はもらえないのでしょうか?」があります。答えは、”もらえる”です!
生命保険は、万が一の時残された家族の生活を保証する公益性の高いものです。相続を放棄し、故人のプラスの財産もマイナスの財産も相続しなかったとしても、生命保険の死亡保険金は、受取人に指定されている人が受け取ることができます。
ただし、注意しなければならないのは、受取人が被相続人となっている場合です。一般的には、生命保険の受取人は特定の親族ですが、生命保険の受取人がすでに死亡していて、受取人を新たに指定しないままになっている場合などがそれに該当します。
相続放棄と生命保険についてでも詳しく書いております。
期限をすぎたら相続放棄できない?
「相続が発生したと知った日から3ヶ月以内」原則ですが、もう一つの基準があります。
それは「自分以外の相続人が相続放棄をしたことを知ってから3ヶ月以内」。もし自分以外の相続人全員が、相続放棄したとします。そうするとプラスの財産もマイナスの財産もどちらも全て一人で相続することとなります。
例えば、
”法定相続分に従って、故人の負債のうち4分の1であれば自分は返せると思って、単純承認したけれども、負債全額は、返済不可能であり相続放棄したい”と言う場合です。
ただし、そういったケースが必ず相続放棄が認められるわけではありませんので、相続が発生したと分かった時点で、専門家へ相談しましょう。
生きているうちに相続放棄はできないの?
「俺、遺産相続で揉めないようにもう親父の財産は相続放棄してるんだ」
よく聞くフレーズですが、相続開始前に相続放棄をすることはできません。できるのは、遺留分の放棄です。遺留分とは、遺言書によって財産分与する場合、生計を共にしてきた親族がいちじるしく不利にならないための制度で、遺言書があっても、法定相続分の2分の1を慰留分として受け取るよう裁判所に申し立てができると言うものです。
しかし、遺留分を放棄するには合理的な理由が必要となります。相続することによって資産が分散しその価値が失われるなどの理由です。また、他の兄弟に強要されたものでないかどうかなど、事情を聞かれます。
高齢者の再婚で使われる「遺留分の放棄」
また、この遺留分の放棄の手続きは、歳をとってから再婚する方が「財産目的の結婚ではない」遺言書によって財産は全て子のものとし、故人の死後、遺留分の請求はしない、その代わり結婚を認めてほしいと子供たちに提案するケースがあります。
法律上は、子供たちの承認がなくても法的な婚姻関係は結べますが、やはり法的に家族となるからには、子供たちにも認められたい。新しい配偶者を家族として扱ってほしいとの心情があります。
ただ、「遺産を放棄します」と言う口約束では、なかなか信用できるものではないため、法的実行力のある家庭裁判所に「遺留分の放棄」の申し立てをするということになります。また「遺留分は放棄しているけれども、再婚相手が生活に困らないだけ残したい」という場合、生命保険が使われることがあります。
【まとめ】〜家庭の事情によって選択しよう
ひとくちに相続放棄といっても、債務を原因とし故人の死後にするものから、死後財産を巡ったトラブルを回避するために、生きているうちに相続を放棄する(遺留分を放棄する)手続きをする場合もあります。「生きているうちに家族に迷惑をかけないよう手続きをしておきたい」とお考えの方が多くいらっしゃいます。
「誰に何をどれだけ残すか」という問題は各々の家庭で違ってきます。「現在債務があり自分の死後どういった手続きが必要か知っておきたい。必要なら家族に知らせておきたい」というご相談もあります。
気になることがあれば、相続に力を入れている司法書士第一事務所が運営する、道内最大規模の札幌大通遺言相談センターの専門家の無料相談をぜひご利用ください!