夫婦関係を結ばずに、内縁の妻(夫)としてその生活を続ける家庭も多く存在します。前回は、内縁の妻(夫)には、相続をする権利が原則として無いことをお伝えしました。
婚姻と内縁で大きく変わる!?内縁の夫、妻に相続権はあるのか?詳しく解説します!
婚姻関係を結ばずに内縁という関係を続けることにより、受け取ることができる相続やその権利が大きく変わってきます。相手の財産を取得することは出来ないのでしょうか?いえ、あるのです!!
そこで今回の記事では、内縁者が相続を受け取るための方法について、解説していきます。
①特別縁故者になる
被相続人に相続人が誰もいない場合、被相続人と特別の縁故があった人がいるのであれば、その方に対して相続財産の一部もしくは全部が与えらえるケースがあります。「特別縁故者」になれるのは、以下の人たちです。
- 被相続人と生計を同じくしていた人
- 被相続人の療養看護に努めた人
- その他被相続人と特別の縁故があった人
内縁関係でずっと連れ添ってきた方であれば、これらに当てはまるでしょうから、特別縁故者に該当する可能性が高いでしょう。ただし、特別縁故者ならすぐに財産がもらえるという訳では有りません。
特別縁故者として財産をもらうには、家庭裁判所で相続財産管理人を選任してもらい、相続人や債権者がいないかを調べてもらう必要があります。相続人等がいないことが確定した場合、確定してから3ヶ月以内に家庭裁判所に対して「相続財産分与の申し立て」をします。その結果、家庭裁判所から特別縁故者として認定されれば、そこでやっと財産をもらうことができます。
②生前贈与をする
相続が発生する前、生前のうちに内縁の夫婦間で贈与する方法があります。生前贈与は、贈与者と受贈者の関係に関わらず行うことが可能ですので、内縁関係にあっても贈与は可能です。贈与税は年間110万円までの贈与であればかからないので、うまく活用すると税金をあまり取られずに財産を移すことも出来るでしょう。この場合において年間の贈与額が110万円を超える場合には、受贈者は贈与税の申告が必要となりますのでご留意ください。ただし、生前贈与しきれず残った財産はパートナーには受け取る権利がありません。
なお、夫婦間の居住用財産の贈与については「贈与税の配偶者控除」により2,000万円まで非課税となる特例があるのですが、内縁の夫婦は法律上の婚姻関係にないので、贈与税の配偶者控除を利用することは出来ません。
③遺言書を書く
内縁関係の2人は、お互いに相続権が無いですが、被相続人が遺言を作って財産を譲る旨の記載をしていれば、婚姻関係がなくても財産を取得することが出来ます。
遺言書は、被相続人の生前の意思が反映されているということから、強い効力を持ち、法定相続よりも優先されます。遺言に書かれた内容は相続人も従わないといけないので、他の相続人が文句を言ってきたとしても大丈夫です。内縁の妻(夫)に財産を残してあげたいのであれば、遺言にしっかりと残してあげたい財産を記載するようにしましょう。
また、遺言があったとしても、本来の相続人には、法律上保障された一定の割合の相続財産を受け取る遺留分という権利があります。そのため、被相続人が内縁関係のあるパートナーに財産の全てを渡す旨の遺言を残した場合でも、本来の相続人から遺留分についての請求があれば、財産を渡さなければならない可能性があります。
④住んでいた家に住み続ける
被相続人が借家に住んでいた場合、賃借権が発生するので、相続財産として遺族が賃借権を相続をすることになります。つまり、被相続人名義の借家に相続人が住んでいた場合、そのまま住み続けることが出来るのです。
では、被相続人と一緒に住んでいた内縁の妻(夫)はどうなるのでしょうか?
内縁の妻(夫)には相続権はないので、基本的には住み続けることはできません。しかし、内縁の妻(夫)を保護するために、被相続人の死亡後も引き続き住み続けることが出来るケースがあるのです。
もともと、被相続人が生きている間は、内縁の妻(夫)は被相続人の持っている賃借権を援用して住むことが出来ていたので、死後もそのまま住み続けられる様にすべき、という考えです。内縁関係にあった方を保護する方向性がありますので、そこは融通が利くのでしょう。
⑤生命保険の受取人にする
自分が死んだ後の生活費等のために、配偶者や家族を受取人とした生命保険に加入しておくことがよくあります。しかし、保険会社の受取人に対する審査は厳しく、親族しか受取人に指定出来ないケースが多いです。
内縁の妻(夫)は法律上の親族ではないので、通常は生命保険の受取人になれません。申し込みをしたとしても審査落ちすることになるでしょう。とはいっても、最近は夫婦別姓や事実婚という選択肢を選ぶカップルも増えてきており、社会的にも認知されてきています。そこで、条件を満たせば内縁の夫婦でも相手を受取人とする生命保険に入れる保険会社も出てきているのです。加入の条件は保険会社によって多少の差はありますので、各保険会社に確認しましょう。
なお、死亡保険金を受け取ることによって相続税が発生することもあるので、その場合は相続税の申告・納税を忘れずに行いましょう。
【まとめ】
内縁関係では相続権はありません。ですが、長年連れ添った相手と考えれば、何とか財産を残したいですね。
それには事前に準備しておくことが大事です。「生前に贈与してしまう」「遺言書を作成しておく」という方法が大変有効ですので、専門家と相談して準備していきましょう。