家族信託は新しい財産の管理方法として、近年注目されています。
認知症対策や相続対策になると聞いて、家族信託をお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは家族信託を始めようとするときの方法や手続きと、必要書類について説明していきます。
ぜひご参考になさってください。
家族信託の始めかた
認知症対策のひとつとして、家族信託を設定することができます。
また、家族信託をスムーズにかつ円満に進めるためにも、事前に家族でよく話し合っておくことをお勧めします。
家族信託をすることが決まったら、以下のような流れで進めていきます。
信託契約を結んで公正証書で作成する
家族信託では委託者は親であることがほとんどですが、どの財産を信託財産にするのか、また受託者の決定など家族間で話し合うことがたくさんあります。
それぞれにあった家族信託の契約をスムーズに行うためにも、設計から公正証書作成までを家族信託を扱う専門家に依頼すると良いでしょう。
さらに公正証書で作成すれば証明力が高く、後々家族間での認識のずれなどを防ぐためにも安心な方法です。
信託財産のための専用口座の開設
金銭を信託する場合は、信託によって預かった財産を明確にし受託者の金銭と分けて管理をしなければいけないと法律で決められています。
そこで「信託口口座」を作成する必要があります。
「信託口口座」があれば、財産が分別管理されていることを明確にすることができます。
例えば、預かった財産を私的財産と混同していると見られて税務署からの指摘を受けたり、家族間でのトラブルに発展してしまう可能性もないとは言えません。
万が一受託者が委託者よりも先になくなった場合でも、信託契約書であらかじめ決めておいた別の委託者にスムーズに引き継ぐことができます。
このような理由から、信託専用の口座を作ることは非常に重要なことと言えます。
不動産の名義を受託者へ移す
信託財産に不動産がある場合は、法務局において信託の登記が必要になります。
これは形式的な所有権の移行であり、信託による名義の移行になります。
不動産登記簿には「信託目録」というものが付けられ、委託者・受託者・受益者の情報や契約の内容が記載されており、信託による登記ということがわかるようになっています。
家族信託のための必要書類
■ 本人確認書類
運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなどの公的な身分証明書を準備します。
■ 印鑑証明
発行から3カ月以内のものでないと効力がありませんので注意しましょう。
公正証書を作成する際に委託者、受託者ともに必要ですが、不動産を信託財産にする場合などは必要枚数が変わります。
取得時期や枚数は専門家にご相談されると良いでしょう。
■ 実印
公正役場で公正証書にする際や法務局での不動産登記の際に、委託者と受託者の実印が必要です。
■ 戸籍謄本
家族信託の設計にあたって委託者の推定相続人を調べたり、信託契約書に記載するため戸籍謄本を準備します。
また公正証書の作成の際に、家族関係を証明するために必要になる場合もあります。
■ 登記事項証明書(登記簿謄本)や固定資産評価証明書
信託財産に不動産がある場合、公正役場において公正証書を作成するタイミングや法務局での不動産登記の際に必要です。
■ 信託不動産の登記済証または登記識別情報
こちらに関しても信託財産に不動産がある場合は必要になる書類です。
不動産登記法の改正により2005年(平成17年)から順次、登記済証に代わって登記識別情報が交付されるようになりました。
登記済証(登記識別情報)はいわゆる権利証のことで、不動産を取得した際に交付されるものです。
法務局で不動産の名義変更の際に使用します。
取得した不動産が数年経っていると、登記済証(登記識別情報)を紛失してしまっているケースも考えられます。
紛失してしまったら再発行はできませんが、別途手続きをすれば不動産登記は可能です。
不動産取得から時間が経過している方は、手元に登記済証や登記識別情報があるか早めに確認しておくと良いでしょう。
■ その他
不動産の登記の際に受託者の住民票と認印が必要になります。
家族信託の手続き方法や必要書類についておわかりいただけましたでしょうか。
家族信託は、認知症になってからでは契約を進めることはできません。
認知症になってしまってから専門家へ相談に行かれて、あきらめざるを得ないという方も多いようです。
「まだ先のこと」と思わず、早めの対策をして備えをしておきましょう。